HDS-R 評価ツール

PT・OT・ST・機能訓練指導員向け 無料評価・計算ツール集

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このツールについて

HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)は、1974年に長谷川和夫らによって開発され、1991年に改訂された認知機能スクリーニングツールです。9項目30点満点で評価し、20点以下で認知症の疑いがあるとされています。日本で最も広く使用されている認知症スクリーニング検査のひとつです。

使い方

各項目をタップして採点します。印刷して記録用紙として使用することも、検査後に結果を入力して保存することも可能です。採点後は「印刷 / PDF保存」ボタンで記録として残せます。

判定の目安

合計点 判定 目安
24点以上 正常範囲 認知機能低下の疑いは低い
21〜23点 境界域 他の検査・生活状況と合わせて経過観察
20点以下 認知症の疑い 確定診断ではなく医師による総合的な診察が必要

ただしHDS-Rはスクリーニングツールであり、確定診断には医師による総合的な診察が必要です。教育歴・文化的背景・身体状態なども考慮して解釈することが重要です。

開発者・長谷川和夫先生のこと

HDS-Rは、精神科医・長谷川和夫先生が1974年に開発し、1991年に改訂したスケールです。長谷川先生は2017年に自らが認知症であることを公表し、後年、認知症の診断を受けています。「痴呆」という呼称を「認知症」に変える議論を主導した先生自身が、晩年に当事者となった、という経緯はNHKスペシャルや著書でも広く語られています。

臨床でHDS-Rを使うとき、この背景を知っているかどうかで、検査に向き合う姿勢が変わってくると感じています。数字だけを追う検査ではなく、開発者自身が「点数の向こう側にある本人の体験」を伝え続けた検査である、という視点を持ちたいものです。

「暗記して待っている」方も少なくありません

HDS-Rでは、即時記銘・遅延再生の設問で「桜・猫・電車」または「梅・犬・自動車」のどちらかの言葉を使います。この2系統はほぼ固定されているため、施設入所の判定や運転免許の更新など、繰り返し検査を受ける機会がある方の中には、事前にこの言葉を覚えて臨む方も一定数います。

即時記銘・遅延再生の点数だけで判断すると、本来の記憶力を正しく評価できていない可能性があります。検査時の様子や、他の設問(計算・逆唱・見当識)とのバランスも合わせて見ることが大切だと感じています。

点数だけで判断しないために

HDS-Rは5〜10分程度でできる、日本で最も使われているスクリーニング検査です。ただし、これはあくまで目安であり確定診断ではありません。

臨床で気をつけているのは、学歴・職業・生活歴によって結果が変わりやすいという点です。長年農業に携わってきた方は野菜の名前がスラスラと出てくることがある一方、教育歴や生活環境によっては、認知機能が保たれていても点数が伸びにくいケースもあります。点数の絶対値だけでなく、MMSEなど他の検査や日常生活の様子と合わせて見ていくことが大切です。

点数の向こうにある「その人らしさ」

PT・OTの立場では、どうしても身体機能や動作能力に目が向きがちです。認知症ケアの視点で見ると、本人らしさ・BPSD・感情面・長期的なQOLが抜け落ちやすいという危うさがあります。

特に注意したいのが、転倒予防を優先するあまり、住み慣れた環境を大きく変えてしまったり、「安全第一」を理由に本人の好みや役割を奪ってしまうケースです。環境調整は「人中心」の視点とセットで考える必要があると感じています。

点数だけ見るな。その人らしさを見ろ。

HDS-Rはスクリーニングの目安でしかありません。特にPTが機能訓練を組む際は、その日の状態・BPSD・人生歴・残存能力を総合的に見て調整することが求められます。HDS-Rは、その人を理解する入口です。数字だけで終わらせず、「その人らしさ」を評価につなげてください。

※本記事は臨床経験と公開資料をもとに作成しています。評価・運用は最新の通知や所属施設のルールをご確認ください。

検査を嫌がる方に、どう向き合うか

HDS-Rを実施しようとすると、「テストされるのが嫌」「バカにされてるみたい」と機嫌を損ねる方が少なくありません。特に軽度の認知症の方や、もともと自尊心の高い方にこの傾向が強く出る印象があります。途中で「もういい」「疲れた」と中断を求められることもありますし、家族が同席していると、本人が答えに詰まった瞬間に先回りして助言してしまい、かえって本人のプレッシャーや拒否感を強めてしまう場面もよく見かけます。

拒否反応が出た時は、一旦中断して雑談に切り替えることが多いです。「疲れましたか?今日はこの辺にしましょうか。〇〇さん、昔はどんなお仕事されてたんですか?」というように話題を変え、最後に「よくできましたよ」「お疲れ様でした」とねぎらいを添えると、機嫌が直りやすいと感じています。その日の体調が良くなさそうであれば、無理をせず日を改めることも選択肢です。

個人的に一番おすすめしたいのは、そもそも「認知症の検査です」と強調しないことです。「健康チェックの一環です」「年齢的な確認をさせてください」といった形で、一般的な会話の延長として導入する方が、抵抗感なく進められることが多いと感じています。ここは声かけのスキルが問われる部分ですが、身につけておく価値は大きいです。

点数以外に見ておきたいこと

検査中は、点数以外の反応にも目を向けるようにしています。わからない時にイライラしたり怒りが出る方は、日常生活で困った場面での反応パターンを予測するヒントになります。逆に諦めて俯いてしまう方は、自信を失いやすいタイプで、支援時に励ましが重要になってきます。ヒントを出した時に嬉しそうに訂正できる方は、残存能力が保たれているサインとして、軽度の段階でのモチベーション維持につながりやすいです。年齢を実際より若く言うなど、少し「盛る」反応が出る方は、自尊心が高く、認知機能の低下を認めたくない性格である場合が多いと感じています。

同じ点数でも、見るべき場所は変わる

HDS-Rは合計点だけで判断すると見落としが生まれます。同じ20点でも、どの項目で失点したかによって、生活上で注意すべきポイントは変わってきます。記憶項目(即時・遅延再生)だけが弱い方は、服薬管理や約束事の記憶漏れに注意が必要です。見当識(日付・場所)が特に悪い方は、季節に合わない服装や、道に迷うリスクに気を配る必要があります。計算・逆唱が苦手な方は、金銭管理や、複数の作業を同時に行う場面でのミスにつながりやすい印象があります。

記録の取り方も工夫しています。点数だけでなく「計算で3回間違えたが自分で気づいて訂正した」「遅延再生でヒントなしで2つ出てきた」といった経過をメモに残すようにしています。拒否・中断があった場合も、そのきっかけと反応を記録しておくと、次回の実施時の工夫につながります。繰り返し実施する際は、点数の増減だけでなく、反応の変化そのものを比較する視点も大切にしています。

点数より、拒否された理由を考えろ。

検査を嫌がる方には、必ず理由があります。テストされる不安、自尊心が傷つく感覚、体調の悪さ、家族への遠慮。拒否そのものを問題として扱うのではなく、その裏にある理由を考えることが、HDS-Rを「検査」から「その人を知る機会」に変える分かれ目だと思っています。

よくある質問

Q. MMSEとの違いは何ですか?

A. HDS-Rは言語のみで実施でき、書字や図形模写が不要なため身体的制約がある方にも使用しやすいです。MMSEは国際的な標準として広く使用されており、書字・図形模写などの視空間認知も評価できます。

Q. 入力したデータはどこかに送信されますか?

A. すべての評価はブラウザ内で完結しており、入力されたデータが外部に送信されることはありません。

Q. 20点以下は必ず認知症ですか?

A. 20点以下は認知症の疑いがあるとされますが、確定診断ではありません。HDS-Rはあくまでスクリーニングツールであり、うつ病・せん妄・低学歴・難聴・視力障害などでも低得点になることがあります。結果は医師による総合的な診察・画像検査・問診などと合わせて解釈する必要があります。

Q. 遅延再生(項目7)の採点が難しいのですが?

A. 遅延再生は自発的に正答した場合は各2点、ヒント(意味カテゴリを提示)後に正答した場合は各1点、不正答は0点で採点します。例えば「桜・猫・電車」のうち「猫」を自発で答え、「植物は?」のヒント後に「桜」を答えた場合は2点+1点=3点となります。本ツールでは得点の組み合わせパターンから選択できるため、計算の手間を省けます。

Q. HDS-RとMoCAはどう違いますか?

A. HDS-Rは記憶・見当識・計算・言語流暢性を中心に評価する日本発のスケールで、30点満点・20点以下が認知症疑いです。MoCA(Montreal Cognitive Assessment)は視空間機能・注意・抽象概念なども含む国際的なスケールで、軽度認知障害(MCI)の検出に優れているとされています。MoCAは著作権の関係から無料ツールとしての公開が制限されています。

参考文献・出典

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