令和8年(2026年)6月1日から、離床を伴わないベッド上リハビリテーションに対して10%の減算が適用されます。「ベッド上リハ=すべて減算」ではなく、対象は限定的です。しかし現場での判断基準と記録対応は、施設によって大きくばらつく可能性があります。
減算対象と除外条件
- その日、離床していない
- ベッド上で完結する訓練
- 主目的がポジショニング・拘縮予防
- 他動的な内容のみ
- 一度でも離床あり
- 能動・専門訓練(自力運動・排泄・ST、離床を目指した訓練(達成の有無を問わない)など)
- 混合訓練(他動以外を含む)
- 早期介入等(特定加算期間内・ICU等)
- 医師判断(3単位以上・カルテ詳述)
除外条件の詳細
①「ベッド上のみ」かつ「他動的訓練のみ」でなければ除外
減算対象になるのは、「ベッド上のみで訓練が完結している」ことと「ポジショニング・拘縮予防等を目的とした他動的な訓練のみを行っている」ことの、両方を満たす場合だけです。どちらか一方でも外れれば除外となります。座位保持や車椅子移乗など離床があった日は「ベッド上のみ」に当てはまらず除外、離床を目指した訓練を行ったが端坐位に至らなかった場合は、たとえ離床が実現しなくても「他動的訓練のみ」には当てはまらないため除外になります(疑義解釈その2問69④)。
②急性期・早期加算期間中は除外
早期リハビリテーション加算・初期加算・急性期リハビリテーション加算の算定期間中、およびICU等の治療室での実施は除外となります。
③小児(15歳未満)は除外
移動が困難な15歳未満の患者は除外対象です。
④医師の判断による除外
3単位以上を医師が医学的に必要と認め、カルテおよびレセプトに理由を詳述した場合は除外となります。この場合の記録の質が特に重要です。
診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄への記載は毎月行います。診療録(カルテ)への記載は、状態に変化が生じた際に随時行うほか、変化がない場合でも少なくとも月1回は記載することとされています。
現場で判断がブレやすいポイント
疑義解釈が出たことで減算対象はかなり限定的であることが明確になりました。しかし現場で困りそうなのは「線引きと記録の負担」です。
- 「他動的訓練のみ」の定義をどう解釈するか
- 早期加算15日目以降をどう扱うか
- ベッド上でも減算されない訓練との境界線
- 監査で説明できる記録をどう作るか
疑義解釈(その2)が示した具体的な判断例
2026年4月1日に公表された疑義解釈(その2)問67・問69において、「特定の患者」に該当するかどうかの具体的なケースが示されました。
- 1単位中に他動的訓練が含まれるが、それ以外の訓練も適切に実施している場合
- 最初の1単位はベッド上で他動的訓練、2単位目途中から車椅子移乗して計6単位実施した場合
- 肺炎でベッド上のみだが、自ら膝の曲げ伸ばしや排痰を促す訓練(能動的訓練)を行った場合
- ベッド上でギャッジアップして言語療法(高次脳機能障害・構音障害等)を行った場合
- 起立性低血圧で離床を目指して訓練したが、結果的に端坐位に至らず終了した場合
- 訓練室のベッド上で他動的訓練のみを行ったが、訓練室への移動に車椅子を使用した場合
- ベッド上で、主に拘縮予防や褥瘡予防を目的とした他動的な関節可動域訓練やポジショニングのみを行った場合
→ 通常の疾患別リハビリ料の100分の90、1日最大2単位まで算定
当院で減算かどうか迷うときの判断基準の一つとして、疑義解釈その2(問69)を参考にしています。
A. 減算対象にはなりません。ポイントは、端坐位まで至ったかではなく、離床を目指した訓練なのかどうかです。離床を目指した訓練であれば、端坐位に至らなくても減算対象には該当しません。「ベッド上で終わった=減算」ではない、ということです。
当院でも、本人の強い離床拒否のため、離床に至らず終了したケースでも減算とはしていません。このように似たケースを判断するうえで、疑義解釈その2(問69)は覚えておいたほうがよいと思われます。
減算対象(特定の患者)になるのは、「ベッド上のみ」で完結し、かつ「ポジショニング・拘縮予防等を目的とした他動的な訓練のみ」を行った場合だけです(詳細は上記「除外条件①」参照)。
減算を避けるための実践的対応
「どこまでやればベッド上リハじゃなくなるか」——この判断が現場の動きを大きく左右します。以下のような要素を訓練に組み込むことで減算対象から外れる可能性があります。
- 訓練の目的を「現状維持」「拘縮予防」「褥瘡予防」「ポジショニング」だけに設定しない——ここがそのまま減算の定義と直結します
- 座位保持を取り入れる(端座位でも可)
- 起立・立位を少しでも実施する
- 能動的な運動を組み込む(自動介助含む)
- ADL訓練へ発展させる
- 排泄動作・更衣など生活行為に結びつける
リハ計画の目標・目的、そして記録が最重要
この改定で最も重要になるのは、記録そのものというより、リハビリテーション計画に掲げる目標・目的、そしてその記録です。リハビリの目標設定は本来、すべて離床・生活行為につながっているはずのものです。結果的にベッド上の訓練で終わった日があっても、その訓練が何を目指していたのか、「なぜその訓練を選択したか」という医学的根拠を記録に残すことが求められます。
- 離床を実施した事実(日時・方法・時間)
- 能動的に介入した内容と患者の反応
- 訓練の目的(機能回復・廃用予防・ADL向上など)
- 医師が必要と判断した場合はその理由
- 除外条件に該当する場合はその根拠
例:「端座位保持2分実施、患者自身で体幹を保持。その後臥床にて他動的関節可動域訓練」
例:「起立性低血圧のため、離床を目指し臥位から座位への移行訓練を実施。座位保持には至らず中止」
「やった」だけでなく「なぜやったか」「どんな効果があったか」を記録することが、監査対応と算定適正化の両面で重要になります。記録の質が算定の正当性を担保する時代になったと言えます。
この改定が示すもの
ベッド上リハビリの厳格化は、単なるコスト削減ではありません。ゴールの見えない維持的な訓練だけを続けることに歯止めをかけ、次の場所——在宅や介護分野——への移行を見据えた関わりへと促す設計になっています。
他動的訓練だけを続けていても評価されにくくなるのは、その訓練が「今日を維持すること」で完結してしまい、「この患者が次にどこへ向かうか」という問いにつながっていないからだと感じています。ベッドサイドで完結するリハビリから、離床を経て生活行為・退院後の生活へと接続するリハビリへ——この改定はその転換を後押ししていると読んでいます。
患者を動かす、起こす、生活に結びつける——これはリハビリテーションの本来の姿でもあります。制度の圧力に押されてではなく、専門職として主体的にその方向性を体現することが、今後のリハビリテーション専門職に求められる姿勢ではないでしょうか。
- 2026年6月1日から離床を伴わない他動的訓練のみに10%減算・1日2単位制限
- 減算対象になるのは「ベッド上のみ」かつ「他動的訓練のみ」の両方を満たす場合だけ——どちらか一方でも外れれば除外
- 離床を目指した訓練であれば、結果的に端坐位等に至らなくても除外対象(疑義解釈その2問69④)
- 訓練の目的を「維持・予防・ポジショニング」だけに設定しないことが、そのまま減算回避につながる
- リハ計画の目標・目的と、実際に試みた経過の記録が、算定の正当性を担保する
- 制度の方向性は「離床促進」ではなく、退院後の在宅・介護分野への移行を見据えた「出口設計」への転換
本記事は令和8年度診療報酬改定の告示・留意事項通知(基本診療料の施設基準等)、疑義解釈資料の送付について(その2)問67・問69(令和8年4月1日保険局医療課事務連絡)、および疑義解釈資料の送付について(その12)問13(令和8年9月2日保険局医療課事務連絡)をもとに作成しています。施行後も追加の疑義解釈が出る可能性があります。算定判断は必ず最新の公式通知を確認してください。