2026年(令和8年)診療報酬改定で新設された「看護・多職種協働加算」は、急性期病棟において看護職員や多職種を追加配置した体制を評価する加算です。PT・OT・STも追加配置の対象職種となっており、リハビリテーション専門職の急性期病棟での役割が改めて問われています。

加算の基本情報

対象病棟急性期一般入院料4・急性期病院B
看護配置10対1
上乗せ配置25対1
対象職種看護職員 または 対象多職種(PT・OT・STを含む)
算定条件看護職員のみでも可
具体例:50床の病棟の場合
10対1配置でNs.5人を配置、さらに25対1配置で2人を追加配置するイメージです。この追加2人にPT・OT・STを充てることが可能です。

表向きの目的と実態

この加算の建前は「多職種連携の強化」です。急性期病棟における早期からのリハビリテーションや多職種によるチームアプローチを推進するという名目で設けられました。

しかし現実を直視すると、もう一つの側面が見えてきます。深刻化する看護師不足の中で、病棟業務をどう回すかという問題への対処です。看護師が足りない、でも病棟は回さないといけない。そこに多職種を組み込む仕組みを作った——連携強化と人手不足対応は、表裏一体の関係にあります。

📌 追記(2026年8月・実践指針第2版より)
上記はあくまで当サイトの見立てです。一方、リハビリテーション専門職団体協議会(3団体)は実践指針の中で「多職種配置は、入院中の患者のADL等の機能の維持、向上や早期退院を目的とするものであり、看護職員の人員不足を補完・代替することを目的とするものではない」と明言しています。

協会としては人手不足対応という側面を公式には否定している、という点は、判断材料としてあわせて共有しておきます。実際の運用が建前・実態のどちらに近いかは、現場ごとに異なるところだと思います。

みなし単位との接続

この加算は、同改定で議論された「個別リハ外の業務合算みなし単位」の考え方と地続きです。

方向性はかなり似ています。療法士が訓練室外でも役割を持ち始めることは、専門性の発揮という意味で歓迎すべき面もあります。ただし、役割が広がると業務が増える。その点は冷静に見ておく必要があります。

最大のリスク:専門性の埋没

⚠️ 現場で起きうること
病院によって、この加算の運用は大きく異なります。「手伝いとして病棟業務をこなす」だけの運用になる施設もあれば、「専門性を活かしたアプローチ」ができる施設もある。導入前の取り決めが極めて重要です。

一度「手伝い業務」として定着してしまった後に「やはり専門性を発揮してほしい」と軌道修正するのは、現場では非常に困難です。これが全国的に浸透し既成事実化することへの危機感を、多くのリハ専門職が抱えています。

大事なのは、導入される前に「リハ職は病棟で何を担うのか」を職場内でしっかり議論し、合意形成しておくことです。

三療法士協会の公式見解

こうした現場の懸念を受け、リハビリテーション専門職団体協議会(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会の3団体)は、令和8年4月に看護・多職種協働加算に関する実践指針を公表しました。

「3療法士は、恒常的な介護業務や生活介助・援助業務を担うものではない」
出典:理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が専門性を発揮して病棟において協働する体制(看護・多職種協働加算)の実践指針【第2版】(リハビリテーション専門職団体協議会、令和8年8月)

リハビリテーション専門職の専門性が病棟業務の中に埋没することへの危機感を、協会が公式に言語化した形です。現場の療法士がこれだけ専門性の喪失を懸念しているということを、管理者・病院側にも理解してほしいところです。

📌 追記(2026年8月・実践指針第2版より)
令和8年8月に発出された第2版では、「3.3療法士の人員配置要件」が新たに追記されました。

看護・多職種協働加算の施設基準そのものには、配置する療法士の経験年数や研修受講についての定めはありません。しかし協会は、より質の高い多職種協働を行う観点から、日本理学療法士協会の登録理学療法士(最短5年の研修受講で取得)・日本作業療法士協会の登録作業療法士(最短5年、2026年度末までは基礎研修修了者も可)・日本言語聴覚士協会の専門プログラム修了者など、十分な経験を有する者を配置することが「望ましい」としています。

これはあくまで団体としての推奨(努力目標)であり、法的な算定要件ではありません。人員配置を検討する際の参考情報として押さえておくとよいと思います。

連携を否定せず、専門性を制度に埋め込む一手

実践指針は、令和8年4月の初版発出から4ヶ月後の令和8年8月、第2版として改訂されました。この間、令和8年6月26日には財政制度等審議会の建議で「医療専門資格の統合」が議論の俎上に上がっています。

第2版で新たに追記されたのは、「登録理学療法士」「登録作業療法士」「言語聴覚士の専門プログラム修了者」など、各協会が定める専門性の証明を、配置要件として位置づける内容でした。看護・多職種協働加算という多職種連携の枠組みそのものには反対せず、その中に専門性の証明を組み込む形です。

連携の流れを否定せず、しかし専門性の輪郭は自分たちの制度の中に位置づける。この動き方を、政策の盤面を読んだ一手として見ることもできると感じています。

リハ職として何をすべきか

この加算が自施設に導入される際、以下の点を事前に確認・提案することを推奨します。

リハ職が病棟に出ていくこと自体は、患者にとっても有益です。問題はその中身です。専門家としての視点・判断・介入を持ち込むことが、リハビリテーション専門職としての存在意義につながります。

参考文献・出典

※本記事は臨床経験と公開資料をもとに作成しています。評価・運用は最新の通知や所属施設のルールをご確認ください。