「給料が上がると聞いたけど、いつから?いくら?」——2026年6月施行の介護報酬改定で、訪問リハビリテーションのPT・OT・STが初めて処遇改善加算の対象になりました。この記事では、加算率の実額計算から給料への反映時期、確認・交渉の方法まで整理します。

1. 何が変わったか

2026年6月1日、介護報酬の臨時改定が施行されました。

これまで処遇改善加算の対象は「介護職員」に限られており、訪問リハビリテーションで働くPT・OT・STは対象外でした。今回の改定で対象が「介護従事者」に拡大され、訪問リハビリテーション事業所(病院・診療所・老健)のPT・OT・STが初めて処遇改善加算の対象となりました。

📋 「介護職員」から「介護従事者」へ
対象の名称変更は単なる言い換えではありません。これによりPT・OT・STをはじめ、これまで対象外だった職種が制度上の枠組みに入りました。訪問リハが対象になったのは今回が初めてです。

2. 対象サービスと加算率

今回新たに処遇改善加算の対象となったサービスと加算率は以下のとおりです。

算定サービス 加算率
訪問リハビリテーション事業所(病院・診療所・老健) 1.5%
訪問看護ステーション(PT・OT・ST訪問) 1.8%
居宅介護支援・介護予防支援 2.1%
⚠️ 加算率は「職種」ではなく「サービス種別」で決まる
同じPTでも、訪問リハビリテーション事業所に所属していれば1.5%、訪問看護ステーションに所属していれば1.8%が適用されます。「PTだから1.5%」ではなく、どのサービス種別で介護報酬を請求しているかで決まります。

3. 実額はいくらか

加算率1.5%が実際にどのくらいの金額になるか、計算してみます。

訪問リハビリテーションの基本報酬は1回(20分)につき308単位です。1単位10円換算(※地域区分により異なります)で計算すると、1回あたりの加算原資は約46円になります。

1回あたりの金額は小さく見えますが、月単位で考えるとイメージが変わります。

📋 計算の前提条件
以下の試算は、40分訪問(20分×2回)× 1日4件 × 月20日稼働を前提としています。1単位10円換算。地域区分により異なります。
訪問リハ事業所 訪問看護ST所属
加算率 1.5% 1.8%
基本報酬 308単位/20分 294単位/20分
月売上(目安) 約49万円 約47万円
月間原資(目安) 約7,500円 約8,500円
年間原資(目安) 約9万円 約10万円
📌 補足・注意点
訪問看護ステーション所属は売上が少ないにもかかわらず、加算率の差(1.8% vs 1.5%)により原資は約1,000円多くなる計算です。

ただし訪問看護ステーションでは、看護職員の訪問回数を超える場合に1回につき8単位の減算が適用されます。実際の稼働状況によって売上・加算原資はさらに変動します。
🧮 自分の職場で試算する

1ヶ月の総訪問コマ数(20分=1コマ)を入力すると、事業所に生まれる加算原資の目安を計算します。40分訪問なら2コマ換算です。

コマ
訪問リハ事業所
7,392 円/月
訪問看護ST所属
8,467 円/月

※1単位10円換算・減算なし・地域区分考慮なしの基本報酬ベース試算。実際の金額は事業所の算定状況により変動します。

4. 給料に反映されるのはいつか

6月のサービス提供分は、7月1〜10日に国保連へ請求され、7月末に事業所へ入金されます。給料への反映は、8月頃が一つの目安ですが、実際の反映時期は事業所によって異なります(7月・8月・賞与での対応など)。

時期内容
6月サービス提供(加算の対象期間スタート)
7月1〜10日事業所→国保連へ請求
7月末国保連→事業所へ入金
8月給料への反映(目安)

ただし、すでに6月施行を見越して上乗せ対応をしている事業所もあります。自分の事業所がどう対応しているか、今のタイミングで確認しておくことが大切です。6月〜7月末の間が、確認・交渉の窓になります。

5. 全額もらえるのか。確認と交渉の方法

加算額は制度上、全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。ただし「全額が自分の給料に入る」わけではありません。配分方法や配分対象は事業所が決めます。

原則はベースアップ(基本給または毎月払いの手当の引き上げ)です。処遇改善手当や一時金での対応が認められる場合もありますが、いずれにせよ加算を取得している事業所には賃金改善の義務があります。

なお、加算を算定するには事業所側がキャリアパス要件等を満たす必要があります。令和8年度は特例要件(ケアプランデータ連携システム等への加入誓約)での届出も認められています。

✅ 確認のポイント
まず「うちの事業所は処遇改善加算を取得しましたか」と直接聞くのが最も確実です。取得している場合は、配分方法と自分への反映額を合わせて確認しましょう。給与明細に「処遇改善手当」等の項目が新たに追加されているかどうかも目安になります。
Column
なぜ訪問看護は訪問リハより加算率が高いのか

訪問リハ1.5%、訪問看護1.8%。この加算率の差がどこから生まれるのか、公表されている審議会資料において直接的な理由が明文化されているわけではありません。しかし、それぞれのサービスの供給構造と政策的な位置づけを並べると、背景にある意図の輪郭が見えてきます。

供給構造の違い

訪問リハビリテーションは病院・診療所・老健が母体でなければ開設できません。そこで働くPT・OT・STは、もともとその組織に所属しています。極端な言い方をすれば、訪問リハは母体組織の人員配置と連動しており、「訪問リハのために採用する」という構造にはなりにくい。

一方、訪問看護ステーションは独立した事業所として単独で成立します。看護師を採用できなければ、事業そのものが成り立ちません。訪問看護にとって採用は、事業存続と直結しています。

政策的優先順位の違い

厚労省はこれまで一貫して「医療から介護へ」「施設から在宅へ」という方向で政策を設計してきました。その在宅医療の中心に位置するのが訪問看護です。看取り、医療的ケア、在宅療養支援——これらを担うサービスの人材確保は、地域医療が回るかどうかに直結します。整理するとこうなります。

①訪問看護の政策的重要性(在宅医療の要)
②独立事業所として人材確保が事業存続に直結
③訪問リハは病院・老健という母体がある

この構造の違いが、1.5%と1.8%の差に反映されている可能性があります。

「PTより看護師が偉いの?」ではない

同じPT・OT・STでも、訪問看護ステーションに所属していれば1.8%が適用されます。これは職種の優劣ではなく、サービス種別の政策的位置づけの差です。転職や職場選びを考えるとき、この構造は知っておく価値があります。

※ここで述べたことは制度の背景から読み取れる考察です。加算率の差の正式な根拠は、社会保障審議会介護給付費分科会の審議資料をご確認ください。

この記事のまとめ
  • 2026年6月1日施行。訪問リハのPT・OT・STが初めて処遇改善加算の対象に
  • 加算率は訪問リハ事業所1.5%、訪問看護ステーション所属は1.8%。職種ではなくサービス種別で決まる
  • 訪問リハ事業所:40分×4件×20日稼働で事業所に入る原資は約7,500円/月(年間約9万円)。これは1人あたりの給与増額ではなく、事業所全体の原資です
  • 訪問看護ステーション所属:同稼働で原資約8,500円/月(年間約10万円)。売上は少なくても加算率の差で原資は多くなる
  • 6月分の入金は7月末、給料への反映は8月頃が目安。ただし実際の反映時期は事業所によって異なります
  • 加算額は全額賃金改善の義務あり。配分方法は事業所次第。今すぐ確認を

6. 確認テンプレート(コピー可)

「どう切り出せばいいか」が一番の壁になりがちです。その前に、まず自分の状況を確認しておきましょう。

✅ 30秒チェックリスト
  • ☐ 事業所は処遇改善加算を取得済みか(または取得予定か)
  • ☐ 自分は配分対象に含まれているか
  • ☐ 給料への反映時期はいつか(7月・8月・賞与など)
  • ☐ 手当として支給か、ベースアップか
  • ☐ 実際の反映額はいくらか

5つすべてを確認できて初めて「自分の給料がどう変わるか」がわかります。

以下のテンプレートをそのままコピーしてLINEやメールで使えます。

📋 管理者への確認テンプレート
お疲れ様です。2026年6月からの介護報酬改定に伴い、処遇改善加算の対象が訪問リハビリテーションにも拡大されました。つきましては、以下の点を確認させていただいてもよいでしょうか。

①当事業所は今回の処遇改善加算を取得する予定でしょうか。
②取得する場合、スタッフへの配分方法(ベースアップ・手当等)と反映時期を教えていただけますか。

よろしくお願いいたします。
💡 管理者に聞く前に自分で確認する方法
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、加算取得状況の参考情報として事業所を検索できます。ただし情報の更新は事業所側の申告ベースのため、最終確認は直接事業所に聞くのが確実です。

なお、事業所が届出をしていない場合、加算は発生せず給料への反映もありません。確認テンプレートの①「取得する予定があるか」が最初の確認ポイントです。

7. 一次資料