わずか16日のあいだに、同じ自治体の名前が、審議会と国会という別々の場で語られた。

6月29日、社会保障審議会介護保険部会。7月15日、衆議院厚生労働委員会。制度改正の議論としては珍しく、同じ論点が続けて浮かび上がっている。

地域包括支援センター基本指針に「リハビリ専門職」が明記

2026年6月29日、社会保障審議会介護保険部会(第135回)で、第10期介護保険事業計画(令和9〜11年度)の基本指針案が示された。

地域包括支援センターについて、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員の3職種以外に「リハビリテーション専門職等の専門職や事務職」の配置も含め、必要な体制を検討することが重要だと明記された。

一見すると、リハ職の配置が制度上認められたようにも読める。

ただしこの記載自体は新しいものではない。現行の第9期指針も「三職種以外の専門職や事務職」という表現で同様の内容を記していた。第10期案で変わったのは、そこに「リハビリテーション専門職等」という具体的な職種名が加わった点である。

配置の義務化ではない。市町村が地域の実情に応じて検討すべき、選択肢としての例示にとどまる。

変わらない土台——人員配置基準と「準ずる者」の壁

地域包括支援センターの3職種は、法令上の配置義務(必置)である。この枠組みは、基本指針案の記載が変わっても動いていない。

3職種の確保が難しい地域向けに、「準ずる者」を配置できる制度もある。その範囲は「地域包括支援センターの設置運営について」(平成18年10月18日老計発第1018001号ほか)で定められている。保健師に準ずる者は地域ケア・地域保健等の経験のある看護師、社会福祉士に準ずる者は一定の相談援助経験を持つ者、主任介護支援専門員に準ずる者はケアマネジメントリーダー研修修了者。

理学療法士や作業療法士は、この「準ずる者」の範囲に含まれていない。

同じ通知には、3職種とは別に「その他の職員の配置」という項目があり、そこに次の一文がある。

「自立支援・介護予防に資する介護予防ケアマネジメント等の実施の観点から理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等のリハビリテーション専門職を配置すること」

つまりリハ職は、3職種の「準ずる者」から漏れたのではない。制度設計の段階で、はじめから別枠に置かれている。

置くことはできる。ただ、人員配置基準を満たす職員としては数えられない。

この壁を越えて配置していた町がある

この制度の壁を越えて、実際にリハ職を配置していた自治体がある。

6月29日の部会で、全国市長会代表として出席した大阪府大東市長・逢坂伸子委員が、運用上の課題を発言している。地域包括支援センターに新たに配置される3職種以外の専門職が、要支援等の軽度者のケアプランを持てるようになれば、深刻化するケアマネ不足による支援の遅れを防げるのではないか、という趣旨の要望だった。

その大東市の市長・逢坂伸子氏は、理学療法士出身である。

ここで終わる話かと思った。ところが約2週間後、国会でも同じ自治体の名前が挙がる。

国会で名指しされた町——同じ壁が2つの場に現れる

7月15日、衆議院厚生労働委員会。中道改革連合・無所属の山本かなえ委員が、地域包括支援センターの人員配置基準を追及した。

基本指針案に「リハビリテーション専門職等」が例示されたことを大きな一歩だと評価しつつ、これで配置職種の拡大が実現したのか確認したところ、人員配置基準そのものは見直されていないことが分かった、と指摘した。

上野賢一郎厚生労働大臣は、3職種を必置とする現行の枠組みを説明した上で、市町村が地域の実情に応じてリハビリテーション専門職を追加配置することも可能だと答弁した。

これに対し山本委員は、「置けないんですよ」「要するにカウントにならないんですね」と即座に反論している。委託の範囲内で置いてもいいという話であって、現実的には無理だという指摘だった。

その上で、それでも配置している自治体があるとして挙げたのが、大阪府大東市である。同市ではリハビリテーション専門職の配置が地域包括支援センターの機能強化につながっており、必要なサービスを必要な期間提供するという介護給付の適正化にもつながっている、と紹介した。時間切れとなり、詳細な質疑には至らないまま、見直しの検討を要請して質疑は終わっている。

観察

基本指針には職種名が加わった。しかし、人員配置基準は変わらなかった。

制度が前に進んだからこそ、次に変えるべき場所がはっきり見えたように思える。

配置は進んだ、で終わる話ではない。人員配置基準そのものがどう扱われるのか、次の基本指針の告示に向けた手続きを、引き続き見ていきたい。

📌 資料の時系列
  • 6/29 社会保障審議会介護保険部会(第135回)——基本指針案に「リハビリテーション専門職等」明記、逢坂委員が運用課題を発言
  • 7/15 衆議院厚生労働委員会——山本かなえ委員が人員配置基準の壁を追及、大東市を実例として引用
  • 今後 基本指針の告示手続き、人員配置基準の見直し検討の行方

コラム:PT出身市長が作った町

大東市長・逢坂伸子氏は、1989年に藍野医療技術専門学校理学療法学科を卒業し、藍野病院勤務を経て1990年に大東市役所に入職した。配属されたのは、全国で唯一の理学療法課だったという。

2004年には、寝たきり防止を目的とした介護予防体操「大東元気でまっせ体操」を考案。2019年に大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科で博士(保健学)を取得し、2024年4月の市長選挙で初当選、大東市初の女性市長となった。

理学療法士出身の市長が率いる自治体が、リハ職配置の実例として国会で紹介された。

よくある質問

Q. 地域包括支援センターにPT・OTは配置できますか?

A. 配置自体は可能です。ただし人員配置基準上の必置3職種(保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員)には含まれず、その「準ずる者」の範囲にも含まれません。市町村の判断で追加配置する「その他の職員」という扱いになります。

Q. 第10期介護保険事業計画基本指針案で何が変わったのですか?

A. 第9期から「三職種以外の専門職や事務職」の配置検討という記載自体はありましたが、第10期案でそこに「リハビリテーション専門職等」という具体的な職種名が加わりました。人員配置基準そのものの変更ではありません。

Q. 大東市はなぜ実例として取り上げられたのですか?

A. 2026年7月15日の衆議院厚生労働委員会で、山本かなえ委員が人員配置基準の壁を指摘する中で、実際にリハ専門職を配置している自治体として大阪府大東市を挙げました。同市長の逢坂伸子氏は理学療法士出身です。

この記事のまとめ
  • 第10期基本指針案に「リハビリテーション専門職等」が明記されたが、人員配置基準は変わっていない
  • PT・OTは3職種の「準ずる者」の範囲に含まれず、配置は可能でも人員配置基準上は数えられない
  • 大阪府大東市が、6月29日の審議会と7月15日の国会、別々の場で同じ論点の実例として登場
  • 大東市長・逢坂伸子氏は理学療法士出身
  • 基本指針の告示手続き・人員配置基準の見直し動向を今後も観察していきたい